第26章 帰郷
「なるほど、元恋人ってやつ?」
「いいや?俺は好きやったけど、こいつ恋愛感情そのものを知らんかったからな?」
それでもまあ平和に馬鹿なことをして、それなりに楽しく過ごしてて。
そんな中で、突然一緒にいられなくなって。
「…二千年弱、って…え…?」
「……ここに来て初めて自覚したの?もしかして好きだったんじゃないかって…会えなくなった後に!?」
「そういうことや…ほら出てこい澪、お前こっちにも甘えてくれたってええやろいい加減」
『…やだ』
粗方の関係性というか、間柄を説明してから、真子はまだ私が行くのを待っている。
待ってくれている。
「素直じゃないなぁほんま…何、そんなに耐性なくなったん?昔は常に背負わされとったのに」
『…嫌だったの?』
「全然?…ほんま、今よりもっと餓鬼の頃からしとるのになんで今更嫌がんねん?」
『、…』
心底、そう言われるのが嬉しいらしい…そうだ、嬉しい。
嬉しいって感じてる。
離れていた年月分の嬉しさや思いが込み上げてくるのを堪えようと唇をキュ、と閉ざすも、やはり私には苦手らしい。
「…さぁて、手当してもらった後で悪いけどあんさんら、授業やったな?ちょっと間こいつ借りるわ」
「!そうでした…教室に戻りましょっか」
殺せんせーに連れられて皆退散していき、残すは私と中也と真子だけ。
「おーおー、涙腺弱なったんちゃうか?お前」
『…、るさい…、なんでもない…っ』
「本人に抱き着いてきてやれよ、あっちだって待ち侘びてんだから…家帰ったら盛大にまた抱きつかせてやるからよ」
中也に手を離されて、能力で移動して真子をベッドに押し倒すように飛びついた。
『ぅ、あ…ッ、…遅、いのよ馬鹿ぁ…っ!』
「…ごめんな、ちょっと死にかけてたりして…危うくお前置いて死んでまうとこやった」
『そんなこと、したら一生許してやらないから…っ、…真子まで置いてっちゃ、やだ…ッ』
「やから生きとるっちゅうねん…お前残していってもた師匠の分も面倒見たらなあかんねんから、死ねるわけないやろ?」
『ッ、!!!!』
私の素直な泣かせ方、よく知ってる…。
ほんとは嫌いなんかじゃないの、これっぽっちも思ってない。
ただ、私はあんたの想いに答えられなくて、それでも再会できてこんなに嬉しくて。
『死んだら殺す、う…っ』
「二回殺すなや…」
