第26章 帰郷
『まあ、甘納豆はついでとして…そろそろ一度むこうに戻らないとなぁ』
「え〜っ、もう帰っちゃうの!?一日くらいこっちにいればいいのに…」
『こっちに一日もいたら、あっちの世界で一ヶ月は過ぎちゃうだろうから…結構離れてるところみたいだったし』
「…あ、そうだ!それならまたあたし達の方からそっちに行けば解決じゃない!」
「お前また仕事サボる気だろ」
冬獅郎の一言にゲッ、と苦い声を漏らす乱菊さん。
全部バレてる、相変わらず。
「そ、そんなぁ…いいじゃないですか、こっちだってもうすぐ冬季休暇なんですし」
『!!…乱菊さん、冬季休暇って……今、こっちっていったい何月なの?』
「ええ?まだ年越し前よ?確か今日が十二月の三十日!」
冬季休暇がまだであると聞いて…そしてまだ年明け前と聞いて、ホッとした。
『本当…?……そっか、…じゃ、じゃあまたこっち来る!そろそろ行くけど、また…明日にでも!』
「あ、明日?偉くまた近…ってそっか、そっちじゃかなり時間がずれてるんだっけ?」
「流石にアタシもそこまで設計してませんでしたねぇ…もう少し時間の流れが同じになるよう作り直してみましょっか」
『そ、そんなことしたら…っ』
喜助さんの方をバッと振り向いて、喉まで出かかった言葉をグッと飲み込んだ。
「折角澪さんに会えたんだ、その方がまた会いやすいでしょう?」
『い、いや…でも、だってそんな…』
「……大丈夫ですよ、すぐ終わります。理論としてはもう完成しているものですから、あとは造り変えるだけですし…そうですねえ、“二時間”くらいで仕上がりますよ。丁度澪さん達の世界でいうところの三日程ッスね」
『…三日…?…それって、三日経って同期したら…二月になっちゃう…??』
「おやおや、あっしとした事が日付の同期まで考えていなかった…そっちの理論を完成させるにはあと何週間かかかっちゃいそうですね」
ニコ、と微笑む喜助さんに、再び胸の奥で安心した。
『三日…三日ね?三日……』
「はい、きっちり二時間かけて綻びのないよう作り上げます」
『…は、早く作りすぎなくていいからね…?ゆっくりでいいから、その…』
「ふふ、ありがとうございます…仕上がったら、真っ先に僕が澪さんのところに行きますよ……中原さん、三日後、少々澪さんをお借りしますね?」
「あ?…ああ、分かった」
