第26章 帰郷
『…浮気したの、怒ってる?…他の人に懐いて、結婚までしちゃったの』
「怒ってないですよ…ちょっと寂しいですけど、娘を嫁に出すパパの心境です」
『世話焼きな人が好きになっちゃったの、喜助さんのせいだね…』
「もう…とっとと他人に分けちゃってればこんなことにならなかったのに。……優しいんですから」
おでこに口付けられながら、涙を優しく拭われる。
『こんなことばっかりしてちゃ、中也に殺されちゃうよ…?』
「唇以外は親子のスキンシップ…じゃあダメですかね?」
『…中也がしてたからセーフかも?』
まだこういう関係になる以前…小さな頃から、喜助さん程ではないにしても、されたことならあった。
『………中也は懐広いから』
「…平子さんはいいんです?無かったことにはしなくてもいいんですよ?」
『……“こうだったかもしれない”、は、無かったことなの。…なのになんでだろ、喜助さんには敵いっこないや……結婚式あげる時、ヴァージンロード…歩いてくれる?』
「!!……喜んで…っ、…僕なんかにはもったいないくらいの役割だ…」
まさか再会できるだなんて思ってもみなかった。
まさか…中也を紹介できるだなんて。
そしてまさか、まだ私のことを好いていただなんて。
…嘘つき、やっぱり大嘘つき。
『…告白ばっかりするくせして、いつまで経っても本命にしなかったせいなんだからね…どれだけ一途なの?』
「……貴女を本命にしてしまうと、僕が足枷にしかなりませんから…それに、“君”を愛した人間が一人くらいいたっていいかと思って。……死神ですけどね」
『…ねえ、本当は…私のこともあって追放されたんじゃないの?』
「さあ、どうでしょう……僕はただ、偶発的に卍解を作用させてしまったに過ぎませんからねぇ」
そんなことするから、胡散臭いって思われるのに。
「それに、二千年も離れてて想い続けろなんていう方が無理な話だ…寧ろ、ちゃんとした相手と結ばれていて安心した」
『…喜助さんは誰かと結婚しないの?』
「ええっ、澪さんから言っちゃいます?それ…僕は永遠に両想いですから」
『人のこといいように使ってくれちゃって…』
「むくれちゃった澪さんも可愛らしいですよ…さあ、戻りましょう。皆さん、澪さんにどっさり用意しちゃってくれてますし」
『?用意って…?』