第26章 帰郷
久しぶりの街並み…久しぶりの空気。
こっちだと、たったの十年ちょっと…だけど、私はそんな年数には感じられなくて。
そういえば作之助も、もうここで生活してるのかな…覚えてるわけはないんだろうけど。
なんて考えて、クスッと笑ったりなんかして。
…私のいなかった間には、想像以上の出来事が起こっていたらしい。
別に、隊長格やそれに匹敵する力を持つ死神が殺されるのは、同業者からしてみれば珍しい話でもない…と思うようになった。
その感覚はマフィアのそれとは少し違う。
日常的な諍いや仕事如きで亡くなるような人は珍しい…しかもそのような程度のものであれば、隊長格が出るまでもなく片がつく。
先程見た人達の様子からしてみて…また、本来それを着ているはずだった人達の実力からしてみて、“何か”が起こっていたのだ…この世界に。
少なくとも、おじいちゃん…こと山本前総隊長に、卯ノ花さん、浮竹さん…それから、狛村さんにやちるちゃんまで。
狛村さんとやちるちゃんのことについては、彼らの経緯は知っていたために…ことの大きさがよく分かる。
そして卯ノ花さんに関しては、剣八になにか関係がある。
京楽さんが総隊長に就任していることから考えてみても、緊急事態だったのは確かはなず。
浮竹さんに関しては…何が原因か分からないというのが本音だ。
それから、ネムさんがいなかった。
マユリさんが連れてきていなかったという可能性は、ほぼ無いに等しい…殉職したというのが妥当な筋だろう。
他にも、感じようとすれば感じようとするほど、分かってしまう…失くしたものが、どれほどのものなのか。
抑えられているそれでも、私なら感じ取れてしまう…以前とちがって、感じてしまうものではなくなったけれど、意識さえすれば分かってしまう。
いなくなっちゃったんだって。
会えなくなっちゃったんだって。
『…私が生きてた意味って何なんだろ』
墓石に向かって膝を抱えて座って…そんなことを呟いても、何も返事は返ってこない。
大切な人達に会えた…でも、肝心な時に、同じように大切な人達を護れなかった。
力にさえ、なれなかった。
手渡された死覇装と、私だけ他とは形の違う白衣…背中に記された“十二”の字。
『……喜助さん、いるんでしょ?…私に隠し通せると思った?』
「…全然。…けど、ここでは静かにした方が、と思って」
