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第26章 帰郷


後から腕を回されて、頭に生意気に顎を乗せて…それなのに相変わらずあたたかいその腕の中で、久しくこの人のぬくもりを感じた。

『…馬、鹿ッ…何、よ……なんであんた、私のことまだ覚えてるのよ…っ』

「…こっちは十年程しか経ってへんからな。…それ抜きにしたって忘れるかい、お前俺がどんだけお前のこと好きか知らんやろ…罪な女やで」

『ッ!!!…、…二千年近く、も離れてて…、そんな、経ってるのに…馬鹿じゃないの、ほんと…!!』

「お前はこっちにおる時、百十年離れてても俺のところに来てくれた」

『!!!!』

トクン、トクン、と真子の鼓動を感じる。
…そうだ、生きてる…ちゃんと、二人とも。

「…せやから、今度こそ俺がって……思ってたのに、何やねんお前…そんなにずっと耐えてたんか…?……頑張りすぎやねん、この阿呆…なんでそんなにずっと一人で背負い込んでてん…」

『だ、って…だって、こんな身体普通じゃ耐えられないはず、だから…ッ』

「………やから腐ってないって言うんや、俺も他の奴らも。…ったく…聞いたからな?全部…なんでお前が“あれ”を二分する覚悟決めたんかも」

半分に分けたところで、身体の組織が綻びもしなかった。
やはり、それほどまでに大きすぎる力…誰かが私利私欲のために扱ってはいけない力。

「…喜助の見解では、半分にしたことで四十六室の判断基準を下回ったんちゃうかっちゅう話や。元々の力がえげつなかったからな…それで切り込めそうな歪を見つけて、とっとと繋げてくれてしもうた」

『こっちの世界で移したのは何日か前よ。…喜助さんがそれで繋げちゃったの…一時間もかからなかったんじゃあない?』

「!よう分かったな…あいつ、涅にも手ぇ貸してもろて……元々、ずっとお前を迎えに行く言うて、黒腔を改良して異空間接続回路の研究に没頭してたんや」

『親バカでそんな人並外れたことしちゃうんだ…まあ、私は喜助さんの“アイジン”らしいから、仕方ないのかもしれないけど』

言った瞬間にピシッと固まる真子。
…あれ、もしかしてこれ知らなかったっけ?

「お、おま…ッ!!?意味わかって言うてんのかそれ!!?」

『愛人じゃなくて“アイジン”だってば…喜助さんの本命はいないんだから』

「じゃあなんで愛人やねん、本命ちゃうんかい!!!」

『喜助さんの本命は、とっくに死んじゃってるからね』
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