第22章 云いたかったこと
「…蝶…?……聞こえてるか?蝶?」
『!!…き、ッ…こ、えて…ますっ…』
「……えらい赤くなってんぞまた…」
だって、あなたがなんの前触れもなくこんな事をするから。
何週間か前、織田作に気付かされた事を思い返した。
もしも、この人に…唇を求められたら、って。
……拒めない…拒みたく、ない。
なんで、私反論もしなかった?
なんで…織田作の時みたいに、抵抗もしなかった?
なんでそれどころか安心して…
「…まあそういう事だ、だから、俺が離れるかもとかそういうことは心配しなくていい……見つけてやるさ、きっと。守れなかったら…そん時は、成仏せずに一生お前のところにいるよ」
『……成仏、は…してください…』
「お前が来るまで絶対しない…一緒にいるんだって約束したからな」
『………ち、中也さん…なんで、その…っ』
頬に…キスなんか…?
言うのを躊躇っていれば、彼の方から口を開かれる。
「…多分、口で言っただけだとお前、納得してくれないと思ってよ。……これで疑われたら俺泣くぞ?…ってもしかして引かれたか!!?」
『ひ、引いてないですッ…』
思わず即答した。
まだ熱い…おかしくなっちゃった、私。
「な、なら良かった……ってなんでまた泣く!!?」
『だ、っ…だって…だって、中也さんがッ!!…中也、さん、がっ…あ…ッ…』
「あーあーごめんごめん!!もうしねえから!!な!?神にでも誓うぞもうしねえ!!!これでいいか!!?」
『しな、いのッ?…蝶…嬉しかったの……に…………〜〜〜!!!?』
口が滑ったとはまさにこのこと。
みるみる赤くなる中也さんの顔に、全部聞こえていたと理解した。
『だ…、っ…ご、ごめんなさい…ッ…!!!』
「あ…っ、て、ああ!?蝶!!!お前能力で…ッ!!?」
咄嗟に中也さんの腕の中から抜け出して、全力疾走で執務室から出ていった。
恥ずかしさに耐えられなくなって。
気持ち悪いって思われた…!?
いや、絶対思われた!!
だって、嬉しいとか…嬉しいとか!!?
自分の頭の中も整理できないままに走って、辿り着いた先で…
『……っ、だ、太宰さん…ッ!!どうしよう…っ、どうしよう!!?』
「うわぁ蝶ちゃん!!?どうしたの!?」
『わ、私変なのっ…、中也さんのこと好きになっちゃっ…て……!!?』
…何をしているんだ私は!!
