第20章 家族というもの
「あのね母さん!?あの人はその、白石さんの保護者っていうか…」
「ほ、保護者って…けど今「兼、彼氏さんっていうか…?」……母さん少し頭痛くなってきたわ」
事実であるが故に理解できないのであろう。
いや、そう、私だって出来ない。
というよりしたくない。
「…彼女、元々孤児のようなものでありまして。我々は職業柄、仕事が出来れば働けるような組織ですし、あいつも子供の頃から働いて自立していたんです」
「!孤児…って…」
「あの男の方もそんなところだったんですけどね。それで、丁度今の渚君くらいの年の頃に、彼女を見つけて拾ってきて…そこから今まで、あの子の育ての親なんですよ」
名前もあいつが付けていた、悔しいながらに本人も気に入っていて、それに彼女によく似合う可愛らしい名前。
「そんな頃から育ててたって…!?じゃあまだ成人してまもないくらいの方なんじゃ…」
「それくらいですね。最初はかなり色々と苦戦していましたけど、蝶ちゃんもいい子に育ってますし、何より二人共幸せそうですし……いい家族だとは思いますよ。最も、最近では親子というより夫婦の方がしっくりくるような気はしますけれど」
「…本当、可愛らしい……あの子、頭もとてもいいんでしょう?E組にいるのが不思議なくらいに…まあ、このクラスの雰囲気を見れば残りたがる気持ちも分からないでもないですけど」
「ふふっ、彼女は探偵社のブレーンの一人ですからね。私も日頃からお世話になってますよ大人ながらに…ああでも、小さい頃はもっと引込み事案でそれもそれで可愛らしくて…」
「太宰さん…でしたっけ。貴方もとても好きなんですね、彼女のこと…寧ろ貴方の方が親に見えてきます」
そんなに出来た人間じゃない。
それを痛感させられて、微笑む目の前の人間の前で笑顔が剥がれ落ちそうになった。
違うんだよ、私は一度彼女の事を放っていった人間なのだから。
それに、出会ってからすぐにあの子を追い詰めて、嫌な事を吐くだけのろくでもない人間で。
思えば相手の情報を更に慎重に集めて取り扱うようになったのも、それで仕事をするのにリスクが激減されたのも、初めて彼女を泣かせてしまった時のあれが大きかった。
「…私は親にはなれませんよ。確かにあいつは親らしく見えないかもしれませんが……何より、あの子のことを真正面からいつでも見ていた人間ですから」
