第20章 家族というもの
まだ残っていた分の山ぶどうジュースを提供し、渚君はお母さんと話している。
ただ、やはり見ていてぎこちない…
「……まあ、普段見てる親子があれだから仕方ないのかもしれないのだけれど」
ちらりと横目でまた教室を見てみれば、カップケーキを半分ほど食べたところでまたなんだか仲の良さそうな二人。
いや、仲が良いとかそんなレベルの絆じゃないだなんてこと、隣で見てきた私が一番よく分かっている。
そんな程度のものじゃないのだ、あの二人は。
蝶ちゃんからだけじゃあない、寧ろ中也の方が…
微笑みあっているかと思いきや中也の手がまた彼女の頭に触れる。
あいつ、いつからかあの子を撫でてるのが普通になっていたような気はするけれど、最近特によく見かけるようになったような。
それもそうか、あの織田作がしてやっていたくらいだ。
彼も彼で、可愛がっていたものだから。
「…ああ、そりゃあ蝶ちゃんもああなるか」
ふと気付いた、四年前のこと…今となっては四年半前と言うべきだろうか。
織田作が殉職し、それから次いで私も…大人気なくも、傷心しているあの子の事を放って表の世界から姿を消した。
中也がいるから、多分あいつなら彼女の事を見ていてくれるだろうから。
彼女もあいつが大好きだろうから、少しの我慢で乗り越えられるものなのではと。
けれどそこじゃない、私が見るべきだったのは。
そうじゃなかったんだ、だってあの子はとても賢い子だったのだから。
もしも彼女がそうだと気が付いた時に、私が傍にいてやれていたら…
もう少し、明るい生活を送れていたのではないだろうか…今よりももっと、傷を負わずにすんでいたのではなかろうか。
そうだ、あの子も大人の女性なのだから。
寧ろ最後の最期で気付いた方が遅いくらいに鈍かっただけの。
「勝てないなぁ、親友ながら…」
「え、太宰さんってそんなに中也さんと仲良かったっけ?」
「死んでもそんなわけがないだろうカルマ君、やめたまえ、それだけは地球が滅んで再生しても起こり得ない事だ」
「すごい言われよう…じゃあ親友って?蝶の事?」
「…いや、私の昔の親友さ。今はちょっと会えないのだけれど」
今の私の生き方の指標になっている彼も、恐らく私よりももっと先に気付いていて、隠そうとしていたんだ。
けど私にさえも見抜かれちゃってるよ織田作。
好きだったんだろう?最初から
