第20章 家族というもの
簡単に釣られて中也の元へ駆けていく。
すると中也はしゃがんで私を抱きとめ、よしよしと撫で始めた。
『栗の!?カップケーキなんて作ってたの!?中也のカップケーキ!!?♪』
「おう、そうだ。前よか数段美味くなってるはずだぜ?」
『やったぁ!!中也大好き!!♡』
「「「ジョーカーはあそこだったか…」」」
「「「こんな気はしました」」」
なんなら食わせてやるよ、と言う中也に更に目を輝かせれば、中也は太宰さんやトウェインさんの方を向いてどうだと言わんばかりに嘲笑して見せていた。
「はっ」
「「…」」
ホイップクリームをトッピングして、今回は上から蜂蜜もかけて、チョコソースもかけて…
そこでふと気がついた。
『あれ?…一個だけ?』
「ああ、食材的な問題でな。なんとかお前の分だけ作った」
『殺せんせーか誰かに怒られなかったの?』
「担任はまあ…なぁ?」
「にゅッ!!…あ、あはは……」
……何したんだろ。
あんまり深く追求しないようにしよう。
「まあ、あの馬鹿共は放っておいて静かに食べようぜ?教室でも借りてよ」
『!うん、半分こする♪』
「はは、分かった分かった…いくつになっても相変わらずだなお前は」
席に向かい合わせに座れば中也は机に皿を置き、少し待ってろと言ってから、今度は飲み物まで持ってきてくれる。
『……あれ?紅茶??』
「おう、茶葉だけ持ってきといた。時間あったら作ってやろうと思って」
『中也のカップケーキに紅茶もあったら、カフェみたいだね!』
「そりゃ言い過ぎだろ、おばさんらくらいのレベルにゃ到底及ばねえよ…ほら、一口目どうぞ?お嬢さん」
頬杖をつきながら、目元を柔らかく緩めて微笑んで、私にカップケーキを少しのせたフォークを差し出す中也。
『意地悪しない?』
「馬鹿、お前が頑張った後にまでしねえよんな事…いらねえなら全部俺が『い、いります!!』ぷっ、可愛い奴」
パクリと食べればそんな風に言いながらクシャッと笑って頭をまた撫でられるものだから、ドクンドクンと胸がうるさくなった。
急いで熱い顔を隠そうと紅茶を飲むも、ホットだったために冷まさず飲んで、あつっ、と舌を離す。
「焦って飲むからだろ、水持ってきといて正解だったな」
『美味しい…』
「そりゃどーも」
『…明日は蝶が作るね?』
「楽しみにしとく」
