第15章 タイガーリリー
今日は、いつもかけてる音楽も流していない。
互いのコーヒーを啜る音だけがリビングに響いている。
はあっと息を吐き出して、ニノがテーブルにマグカップを置いた。
「なんか…照れるね…」
「えっ…?」
「俺のこと思い出す出さないは別として…俺達、付き合ったばっかりだったから…こうやって二人きりになったことなかったんだ…」
「あ…そっか…」
今週の火曜日の収録の時に、俺達は付き合うことになったらしい。
そのすぐ次の日に俺は入院してしまったのだから、そりゃ二人きりで自宅で会うなんて不可能だっただろう。
ニノのクリームパンみたいな可愛らしい手が、膝の上でにぎにぎされてた。
「…手、触ってもいい?」
なんだかさわり心地が良さそうだったから、つい言ってしまった。
「えっ…あ、うん…」
頬を真っ赤に染めて、ニノは俺に手を差し出した。
「あ…」
「え…?」
「その顔…見覚えある…」
「ほんと…?」
ぎゅっとニノの手を握った。
この手も、握った覚えがあった。
「この手も…覚えてる…」
「翔ちゃん…」
ニノの声が掠れてた。
「ごめん…全部はまだ思い出せない…」
「ううん…いいよ。こうやってちょこっとでも覚えてて貰って…嬉しいから…」