第11章 グレイscene4
それから暫くして、潤くんは俺の手の中に落ちてきた。
…かわいいんだから…
あんなことで怯えちゃって…
家に帰るとごっそりと袋に溜まったスマホや携帯を数台残してマネージャーに預けた。
「それ、全部解約しといて」
「え…?」
「いいか…誰にも言うんじゃねえぞ」
ベランダに設置していた鳥の捕獲器も捨てた。
もう必要ないから。
「ニノ…?なんかいいことあった…?」
「ん…?ううん…」
その夜も、潤は俺の腕の中でかわいく鳴いた。
気だるく俺の腕の中にいるこの男を手に入れるため、俺は回りくどいことをしてしまった。
しょうがない。
だって潤はノーマルなんだから。
「そうだな…いいことはあったよ?」
「なに…?」
その大きく輝く瞳を俺に向けると、潤は微笑んだ。
「潤が…俺のこと好きになってくれたこと…」
恥ずかしげに目を伏せたかと思うと、潤の腕が俺の首に巻き付いた。
「抱いて…」
震える声も、俺には甘美な媚薬でしかない。
「好きだよ…潤…ありがとう…」
「ニノ…俺も…好き…」
甘い時間に、俺は陶酔した。
潤の部屋で暮らし始めて一ヶ月。
嫌がらせの数もだんだん減らしていった。
潤には、俺が食い止めているように見えるだろう。
それも好都合だった。
でも…
「痛っ…」
一緒に帰ってきた潤のマンション。
郵便物を取って戻ってきた潤が、急に床に郵便物をばら撒いた。
「どうした!?」
潤の指から血が流れていた。
「えっ…」
郵便物の間に、カッターの刃が剥きだしであるのが見えた。
「なんだよ…これ…」
「あ…気にしないで…時々あることだから…」
「えっ…前からあるのか!?」
「うん…大丈夫だから、ね?」
嘘だ…俺、こんなことしてない…
一体誰が…
呆然とエントランスに佇むニノの背中を、遠くから双眼鏡で眺めた。
それでいい。
慄けばいい。
「やっと気づいたんだね…鈍いなあ…」
潤がニノの肩を抱いて、ドアの向こうに二人は消えていった。
それを見送ると、自然と笑み崩れるのを止められなかった。
懐のスマホが鳴る。
スワイプすると、俺は電話に出た。
「はい、名無しです…」
【END】