第2章 グレイscene3
何度も何度も手紙を書いたけど、帰ってきてしまう。
だんだんお腹は大きくなってくる。
「母様、僕が代わります」
翔は率先して家事をやってくれて、私を助けてくれる。
「ぼくもー!」
「もー!」
智と潤もそれを見習って、母を助けてくれる。
こんな幼い子達が頑張っているのだから、母の私がしっかりしなければとおもうのだけれども。
雅紀さんと連絡がとれないことが、不安で仕方なかった。
時折夜になると、布団のなかで知らずに泣いていることもあった。
雅紀さん…ご無事で…雅紀さん…逢いたい…
「相葉さーん!電報です!」
それはある日、突然にきた。
電報をみると、大日本帝国陸軍の印がついていた。
郵便屋は、真っ青な顔をして座り込んだ私に気の毒そうな視線を向けた。
「では…」
そう言って足早に去っていった。
震える手で電報を開いた。
「母様…?」
翔が後ろから覗きこむ。
「あっちへ行っていなさい!」
「…はい…」
幼い弟たちを連れて、翔は居間へ入っていく。
それは雅紀と同じ連隊に入っている、近所の人からだった。
『マサキシス』
たった
たった5文字の知らせ。
「…いや…いやぁっ…」
「母様!?」
「…あっ…!?」
急激にお腹が張った。
そういえばさっきからお腹が痛かった。
「翔…裏のおばさんを…」
「はいっ…」
雅紀…雅紀さん…
帰ってきて…
あなたの子供…生まれるのよ…
”和…無事に産まれるよ…”
あなた…
”大丈夫…俺がちゃんと見守ってる…”
いや…そばに…居て…?
”居るよ…だってその子は、俺の…”
力強い産声が聞こえた瞬間、玉音放送が始まった。
「和!」
ぱちっと目が覚めた。
「あ、相葉さん…」
「こんなとこで寝るなよ…」
「あれ…」
そこは楽屋だった。
「相葉さん…生きてる?」
「はあ?」
ぺたぺた顔を触って確認した。
「はぁ…よかった…生きてる…」
「なに…どうしたの?」
「ん…夢…見ただけ…」
「どんな夢?」
「秘密」
俺はぎゅうううっと相葉さんを抱きしめた。
「ねえ…?」
「ん?」
「これからもずっと側にいてね?」
ふっと相葉さんは笑った。
「生まれ変わっても一緒にいてやるよ」
「…うん…嬉しい…」
ちょびっと涙が零れた。
【END】