第23章 Sad Monster【ドリフターズ】
「待たせたな、島津。」
「応さ、応さ。
待っちょった。」
今、俺と島津は一間程の距離を置いて対峙している。
島津の背後には第六天魔王と伝説の弓手(ゆんで)。
二人共に俺と島津を神妙な面持ちで眺めているが、口や手を出す気は無い様だ。
一方、俺はと言えば唯一人。
それが腑に落ちないのか、島津はいの一番に問い掛けて来た。
「お前(まあ)だけがか?
はどがいした?」
「気になるか?」
「当然じゃ!
は俺(おい)と同じ血を引いちょる島津の末裔じゃ。
貴様(きさん)がをどうにかしておったら許さんど。」
が俺の元に戻ると決めた時は、止めもせず送り出したであろうに。
それでも此奴等はずっとを懼れていたのだろうな。
余りにも容易に想像される姿に少し口角を上げ、俺は答える。
「は……生きている。
現在も、俺の傍で日々笑って過ごして居る。」
淡々と告げた俺の答えに
「ほうかぁ!
そんは何よりじゃ!」
島津はくしゃりと笑みを浮かべ何度も頷いた。
あれ程に恨んで憎んで、万回縊り殺したとしても飽き足らないと思っていた島津豊久が目の前に居るというのに、今の俺の心は自分でも驚く位に澄み切っている。
それが表情にも顕れているのだろうな。
島津は首を傾げて言った。
「そんでん、お前(まあ)は何しに来た?
また俺(おい)と斬り合(お)うたくなったとが?」
勿論、島津とあのままで終わる心算など無い。
《決着》を付けるまでは終われん。
そうでなければ、俺は何処にも進めやしないのだから。