第8章 思い出の欠片
だが、ここで気付いたが黄瀬の気配が強いせいか、他の狐族の気配が薄いということだ。それは、わざと黄瀬に集中するように仕向けているのではないかと、思っている結紀。
それに狐族は人間族と同盟を結んでいることを思い出す結紀。もしかしたら、近くで人間がいるのではないかと。それは、緑間も気付いている。
「随分、連れてきたのだな、黄瀬。」
緑間の一言に、黄瀬は思わず苦笑を浮かべる。
「ありゃりゃ…バレてるんスか。」
「アンタの首、貰ったわ!」
「…。」
忽然と姿を表した華菜。よく見れば、華鶴の姿もあった。どうやら、緑間を挟み撃ちにしようとしている。緑間は弓矢を構えることをやめ、華鶴の方に向かって蹴りを入れる。
更に、結紀は華菜に向かって右足で吹き飛ばす。この行動に驚きを隠せない狐族達。普通の人間なら吹き飛ばすことには難しいのだ。花畑に転がる華菜と華鶴。
折角の綺麗な花が台無しと思っている結紀だが、今はそれどころではない。結紀は目を細め黄瀬を睨み付ける。
「驚いたっスね。キミ、人間族じゃないっスね。」
「……。」
結紀は相変わらず無言のままだ。緑間は、再び弓矢を構えて、小声で結紀に話し掛ける。
「お前の正体がバレるのは時間の問題なのだよ。ここは、オレが引き受ける。お前はさっさと逃げるのだよ。」
「緑――――」
「行かせないよ。」
結紀が緑間に声を掛けようとしていた時に、背後から声が聞こえてきた。結紀と緑間は驚きながら振り返る。そこにいたのは、氷室だった。今まで、氷室の気配など一切感じていなかった。