第19章 不言色(いわぬいろ)
雅紀が慌てて逃げ出す。
「翔ちゃん、先いってる!」
「てめえ逃げんな!」
笑いながら松岡くんはこちらを向く。
「翔、元気か?」
「うん。なんとかね」
「そっか…」
手を伸ばして、俺の髪をくしゃっと撫でた。
「またな。翔」
「うん。またね」
立ち去る後ろ姿を見送った。
「あ」
「え?」
「翔、今度ヤラせろよ」
「ふ…ばーか。二度とないよ」
「…だよな」
笑いながら、松岡くんは離れていった。
あの頃…
俺は松岡くんに夢中だった。
だから和也が告白してくれたのも、気付かなかった。
毎日毎日、俺は松岡くんに抱かれていたから。
雅紀…
お前が俺のこと犯したのも。
別に俺は平気だったよ。
全然傷つかなかった。
むしろお前がああ出てきてくれて、ホッとしたんだ。
俺の身体に夢中になれば、和也から離れてくれるって確信したから。
松岡くんと別れたのは色々な理由があったからだけど、でも俺の身体に彼は夢中だった。
きっと、お前もそうなるって…
俺はわかってたんだ。
わかっていたんだ、和也。
俺が暫く会わなければ…お前が俺と雅紀のこと、気づくことも。
全部、わかってた。