第12章 退紅(あらそめ)scene2
「さっきからメモもとってませんが…聞きたいことはそれだけですか?」
「まあまあ、そんなあせらないでくださいよ…」
灰皿に灰を落とした。
「わかってるでしょ…?なんのことだか…」
「いいえ…一向に」
「さすが役者だ…いや…アイドルか…」
バカにした言い方。
そんなことで挑発しようとしても無駄だ。
ずっと、言われ続けてきたことだ。
アイドルのくせに。
バカだな…この人…
そう思ったら、少し肩の力が抜けた。
「俺からお話することは…ありません」
「櫻井さん…」
「こんな事件追ったって、なんにもなりませんよ…?」
「じゃあ、質問を変えましょうか」
男はぎゅっとタバコをもみ消した。
「死んだ幹部の方には、黒い噂がありましたよね」
「さあ…知りません」
「少年を性的に虐待していた、と」
「へぇ…初耳です」
「その中に、オタクのリーダーの名前もありますが…本当に知らないの?」
「え…?」
「大野智も名前挙がってるよ」
「嘘でしょ…」
オタオタしてるふりをした。
ここで男が身を乗り出してきた。
「この情報、買わないか」