第19章 男の嫉妬ほど見苦しいものは無い
『あの、何ですか?』
高杉「他人の物を奪い取るのも悪くないが、奪い取る手間が省けていい。面倒なのは嫌いだ。」
『さっきから何言って…』
私は言葉を最後まで言い切る事が出来なかった。彼の手によりいきなり上げられた顎、そして触れるか触れないかの唇の距離。いくら理解の悪い私も、ここに来て無駄にいろいろ経験してきた訳じゃない。この人が一体今から私に何をしようとしているかなんて事は大体の予想はついた。
一瞬鈍ってしまった身体を呼び覚ますように私は一歩後ずさりしてその距離から逃れた。
高杉「そんな目で見るな。まだ何もしていないだろう。」
『まだって、何かしようとしてたってことですよね!』
こんな事を言っているけど内心は物凄く怯えていた。ここは海の上。何かあっても絶対誰も助けに来てくれないどころか、居場所すら分からないのだから。自分なりに彼を睨み付けていたつもりだったが、怯む事等無く再び私に近付いてくる。何も言葉を発さない沈黙で起こるその状況に更に恐怖は増して無意識のうちに後ずさりをしていた。
高杉「何もしやしねぇよ。そんな怯えるな。」
妖艶な笑みを浮かべながらこちらに向かってくる足は止まることはなく、私はただ彼を見る事しか出来なかった。
「晋助様ァァ!!女連れ込んでるってマジっすか!!誰なんスかソイツ!!」
すると怒声を上げて一人の女性が部屋に突撃してきた。さすがに驚いたのか高杉さんの足は止まっていた。