第19章 男の嫉妬ほど見苦しいものは無い
『………船の上ってこんなに揺れるんですね…。』
高杉「何だ、初めてなのか?」
『えぇ、まぁ…。機会が無かったもので。』
そもそもまともに海なんて見た事も無かった私は船の小窓から見える景色に感動した。ここに来てから初体験が多すぎて何だか夢の世界にいるみたい。いや、夢だったらそれはそれで物凄く困るのだけど。
それにしても綺麗…塩の香りってこういうのなんだ。
高杉「何だ、海も初めてなのか?」
『はい、初めてです。』
高杉「お前みたいな今時の若い女が珍しいものだな、クックッ…」
『し、失礼な!今時の若い女皆が皆流行りに乗ってるなんて思わないでくださいよ!』
相変わらず良く笑う人だ。それも人を馬鹿にするような笑いばかり。何がそんなにこの人を面白おかしく笑わせてるなんて私には分からない。
高杉「そういえば、名は何と言う?」
『あ、そういえば言ってなかったですね。一条天音です。』
高杉「ほう、そしてお前が銀時の女という訳か…。」
高杉さんは私から視線を逸らし何処かを見つめて不敵な笑みを浮かべた。そしてまた銀さんの名前。やはり銀さんの知り合いなのかな。
…ん?銀さんの女?えええ!?
『ちょっと待ってください私銀さんの女じゃありません。』
高杉「そうなのか、それなら尚更都合がいいな。」
そう言いながら高杉さんは視線を私に戻すとどんどん距離を縮め、気が付けば私のすぐ目の前まで迫っていた。