第52章 初恋苦し（北信介）完結

背中に掛かる声に
慌てて振り返ると
汗まみれで私を睨んでる
侑の姿

…部活は！？

『チョット…なに抜けて来てんの？
怒られるやん！』

もう北さんも体育館に戻ったし
侑が抜け出してるのバレたら
説教だけじゃ済まへんかも…！

「…怒られるくらいが
ちょうどエエねん、俺は。
姫凪、俺な
オマエに話さなアカン事が
いっぱいあんねん」

侑が汗をTシャツで拭いながら
私をジッと見つめる

『話？何？』

「オマエもあるやろ、俺に話」

話したいことはいっぱいある
話さなアカン事も

でも、どれから
何から
どこから話たらエエんか

分からんねん

「…なにからでも
どっからでもエエ。
チャント話そや」

私の気持ちを見抜いた様に
声を落として
頭を撫でる侑に
涙は更に溢れてくる

「…これ以上泣いたら
襲うぞ、アホ。
オマエは悪ないから
泣くなや」

『悪くないわけないやん！
私…最低…や、もん！』