第52章 初恋苦し（北信介）完結

振り返ろうとした身体が

「…修行が足らんの
教え貰えてありがとうな
もう揺れへん様に
また頑張るわ
せやし、お前は
侑の隣に戻り
俺の事はもう…
気に掛けんでエエよ」

カチンと固まる

静かな声に
涙が涙腺をノックする

『わ、分かりました！
じゃあ…戻りますから！』

振り返るのを止めて
歩き出す
トイレにも寄らず
体育館にも戻らず

ただただ涙が流せる所に
足を進める

なんで今気付くんやろ

こんなに北さんの存在が
自分の中で
大きくなってたなんて

これは…恋？

じゃあ、侑に対する気持ちは？

もう、何が何か分からへんよ

身勝手に動き回る感情に
頭も心もグチャグチャや

なによりも
こんなに芯のない自分が
吐き気がする程嫌い…

『もうイヤ…消えたい…』

呟いた言葉は
暗い空に吸い込まれ
大粒の涙の雨は頬を伝う

「引っ掻き回したまんま
勝手に消えんなやボケ
ほんまオマエは
鈍くさいのぉ」