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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第5章 ◇8/10Birthday(ラビ)



 楽しそうに出店で買った食べ物を口にしたり、取った景品を手にして行き交う人達。
 見慣れない色とりどりの女性の華やかな服装は、見ているだけで面白い。


「なぁなぁ南」

「んー?」


 教団でアジア人は珍しくもないけど、日本人ってのは稀だ。
 そんな南と同じ人種の人ばっかいるこの場を見ていると、不意に我ながら良い案が浮かんでしまった。
 未だに暑そうにぱたぱたと顔を手で仰いでいる南に、笑顔でそれを提案してみる。


「折角だしさ、あれ着てみてくんね? 日本の伝統衣装っ」

「伝統衣装って…あれ?」

「そうそう。キモノってやつだろ?」

「あれは着物じゃなくて浴衣だけど…」

「ユカタ?」

「…うんまぁいいや。似たようなもんかな」


 ユカタって名前は初耳さなー…今度勉強しておこう。

 でも見た目はキモノと同じに見える。
 和服ってやつだろ?


「あれ着たら、今より涼しくなんじゃね?」

「そうかなぁ…」

「なっ折角だし! オレ、南の伝統衣装見てみたいっ」


 ぱんっと両手を合わせて、このとーり!と頼み込む。

 リナリーのチャイナ服みたいなもんだ。
 南が自国の服を着てるとこなんて見たことねぇし。
 興味が湧くと、その欲求は抑えられなくなった。


「オレへの誕生日プレゼントだと思って!」

「………もう。それズルイ」


 少しの沈黙の後。
 ぽそりと告げられた言葉に思わず目を開ければ。


「そんなふうに言われたら、断れないでしょ」


 目を逸らしながらぽそぽそと小さな声で承諾する南の姿に、胸はきゅんとしてしまった。

 ……何この目の前の可愛い人。
 プレゼントでって頼んだら、ハグとかもくれんのかな…。
 あわよくばキス…やめやめ。
 今はそっち系の欲求出したら駄目だ、折角南が言うこと聞いてくれてんのに。

 健全でいけオレ。









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