第7章 ◇サンタクロースと4人の子(ティーンズ組)
「神田、おはよう」
「…ああ」
最初に動きを見せたのはリナリーだった。
気軽に声をかければ、流石幼馴染と言おうか。威嚇なんて見せずに、足を止めて手短にだが神田は返事を寄越した。
「それとメリークリスマス」
「は?」
「今日はクリスマスよ。ね、神田の下にもサンタさんやって来た?」
「…あ?」
しかしにっこりと笑顔でリナリーが尋ねれば、何か嫌なことでも思い出したのか。忽ち神田の気配が逆立つ。
「…その分じゃ来たっぽいさな」
「なんで怒ってんですか、プレゼント貰えたんでしょ?」
「神田が頼んだプレゼントって何? 私気になるかも」
「んなもん頼んでねぇよッ!」
途端にわらわらと興味を持って集ってくるアレン達に、至極迷惑そうに神田は声を荒げた。
その反応からすれば、どうやらサンタクロースは神田にもプレゼントを渡して行ったらしい。
この暴君に、クリスマスの妖精は何を与えていったのか。
アレン達は湧き出る興味を一斉に、神田へと向けた。
いつものように早朝トレーニングをしようと陽が昇る前に起床すれば、神田の目に飛び込んできたのは見知らぬ派手な装飾のプレゼントだった。
知らない者からの知らないプレゼントが、枕元に勝手に置かれている状態。
それだけでも胡散臭さしか感じないのに、開いてみれば中から出てきたのは、蕎麦の箱を抱いた愛らしいサンタクロースの縫いぐるみ。
"本物は勘弁して下さい"と書かれたメッセージ付きで。
そんなもの貰って、誰が嬉しいなどと思おうか。
というか首を差し出す気がないならわざわざ縫いぐるみなど押し付けるなと、神田は罵ってやりたい衝動を抑える他なかった。
どう見たって縫いぐるみを愛でるような年齢には見えないだろうに、何故こんなプレゼントをチョイスしたのか。
蕎麦は食すにしても縫いぐるみなど不要だ。
サンタクロースとやらの気が知れない。