第2章 ワインレッドscene1
背中の寒さで目が覚めた。
濡れタオルの感触が気持ち悪い。
冷え切った背中が、再び眠りに落ちるのを許してくれない。
開けたくない目を開けると、そこはまた寝室だった。
ぼんやりと周りを見渡すと、そこには俺一人だった。
急に心細くなる。
寝室のドアが開いて、潤が入ってくる。
「あ、目が覚めた?」
そういうと俺の傍にきて、顔を覗きこむ。
手際よく濡れタオルを取り去る。
「顔色悪いね」
額に手を当てる。
「熱がある」
そういうと、サイドボードから体温計を取り出した。
「すぐだからね」
俺の脇に差し込むと、暫くそこを見つめている。
薄明かりの中で見つめると、その横顔は陶器のように白かった。
「おまえも……顔色悪い……」
なんとか振り絞った声はガラガラだった。
びっくりしたように顔を上げる。
「え?」
「顔色、おまえも悪いよ」
「そう…?」
すぐに目を逸らす。
ピピッと体温計が鳴る。
取り出して眺めた潤の顔が曇る。
「38度ある」
もう一度額に手を当てる。
「もう一回、鎮痛剤飲もうか」
「?」
そう言うと、サイドボードに乗っていた、さっき飲まされた錠剤を手に取る。
「それ……」
「あ、これ。鎮痛剤…」
そう言うと押し黙ってしまった。
「だってそれ、媚薬だって…」
「……あの時、翔くんが背中痛そうにしてたから…」
「なんで媚薬だって…」
「ごめん…翔くんが、翔くんの気持ちが楽になるかと思って…」
そういうと俯いた。
「あんなこと無理やりした俺が言えることじゃないけどさ…」
言うと立ち上がった。
「薬、胃に悪いから、なんか食べ物取ってくるよ」
言いながら部屋から出て行った。
残された俺は薄がけの布団に潜り込んだ。
なにがなんだかわからない。
激しいのか、優しいのか。
憎いのか、許せないのか。
頭がクラクラする。
布団から潤の香りがした。
俺はまた眠りの淵に落ちていった。