第5章 退紅(あらそめ)scene1
楽屋に入ると、もうさっきの大野智はどこにも居なかった。
気さくに笑い、純朴そうな青年の姿に変わっていた。
でも、俺は目が離せない。
時々、彼の身体から出るあの色香を見逃せないから。
ふとした瞬間に俺の唇を弄る、あの表情が見えるから。
そんな俺を知ってか知らずか、わざと他の男に寄りかかって妖艶に微笑みかけてくるときもある。
なんでこんなに心乱されるのに、まだ見つめてしまうんだろう。
何気なく新聞を読んでいるふりをしているが、俺の心は乱れたままだった。
収録がスタートすると、スタッフから声がかかる。
全員でスタジオに向かう。
ふと、また目線をやると、智くんとニノが手を繋いでいた。
こんな風景、イヤになるほどみている。
でも、今朝、あのキスをしたばかりの俺には、衝撃がくる。
俺にキスしたのに、他のヤツと手を繋ぐの?
その笑顔を、見せるの?
そう思って呆然としていると、今度は松潤が智くんの肩に手を回しかけた。
そして、耳元になにやら囁くと、二人で笑い始めた。
松潤は肩から手を外すと、今度は腰に手を回し、そのまま3人でスタジをに入っていった。
スタジオの観覧席にいる、観客から悲鳴があがる。
わかってる、あれもファンサービスの一つだって。
わかってるんだ。
わかってるんだけど。
俺の中の、この気持ちは外に出ることを許されない。
でも。
ぐつぐつと煮えたぎって、いつかあの人を焼き殺してしまいそうだった。