第6章 免許2
「テレビでここに入校したの知って、そのうち会えるかなぁ、とは思ってんですけど……あ、狙って入ったんじゃなくて、元から私もここに入校してたんですけど…」
追っかけて入ったわけじゃないんです!と必死に弁解する様が心をほっこりさせた。
「あ、そこは追っかけ入校の方が嬉しかったなぁ」
「はっ!ご、ごめんなさっ…!」
「冗談やって」
冗談交じりに言うと予想通り、わたわたとする女の子。嘘のつけない子なんだろうなぁ。
先生が「はい、お待たせしました~」と言ってようやく始まるようだ。
「ほんならよろしく」
「はいっ」
*******
「ヒナちゃーん」
蒼生が座学を終え、一旦カフェテラスに戻ると待ってる村上はテーブルに突っ伏していた。貸した小説は彼の枕になっていた。
「うん、やっぱしね。」
蒼生は予想通り、とでも言うように静かに頷いた。待たせているのは自分だし、特に起きていて欲しかったわけでもない。
メンバーでの仕事も多いけど、村上は村上で、その人懐っこさからいろんな人に食事に誘われたりしているし、仕事ぶりも良いから他のメンバーより番組に出ることも多い。疲れてないはずがない。ましてやデビューしてからその回数は増えた。
「ありがとね〜」
起こさないように静かに言って、優しく、眠る村上の頭を撫でた。
そうだ、とバッグの中から紙の切れ端とペンを出し、何やら書いて、次の実技の教習へと向かった。
「ん…?」
チャイムの音が聞こえた気がして起きた。
霄から借りた本は面白くないわけとちゃうかってんけど眠くなってしまった。
___チャイムの音が聞こえた思うたけど…始業の方やってんか…
周りをキョロキョロと見ても霄の姿はあらへん。ヒラヒラと何かが舞った。
「紙?」
落ちたそれを拾い上げると文字が書かれていた。
『お疲れ様。ありがとう。頑張ってきます』
それは明らかに霄の字やった。
自分も教習で大変やのに人に『お疲れ様』という言葉を一番先に言う彼女はほんまに可愛らしいと思う。それは男女間のアレやなくて、メンバーもそうやと思うねんけど、妹のような感じやねん。もはや家族やから、そこにやましい感情は生まれへん。
守らなあかんな__