第1章 第一章
「時音さんは町に降りようとしていたのですか?・・・・・・無茶な事をするなぁ・・・・・・山は足場が悪くて走って降りようものなら転んで怪我しますよ。しかも今は真夜中ですから・・・・・・」
「ごめん・・・・・・宗次郎を熊やオオカミと戦わせたくなかったの」
「え・・・・・・なんでです?」
「宗次郎・・・・・・戦った後辛そうな顔をするんだもん。もう宗次郎の悲しむ姿は見たくないよ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
宗次郎の私を抱く力が強くなった。
心臓が跳ね上がる。
宗次郎・・・・・・?
「あなたは本当にお優しいですね」
「え・・・・・・ううん・・・・・・宗次郎に・・・・・・傷ついてほしくないんだ・・・・・・」
「ありがとうございます」
宗次郎が腕の力を緩めて私から離れた。
そして私に微笑みかけ、
「行きましょう」と私の手を取って歩き出した。