第1章 第一章
「っ・・・・・・」
私は宗次郎から体を背けた。
「今夜は山でもいいですか?」
「え・・・・・・」
「山奥の木々の茂った場所でなら火を焚いても里の人々にはあまり火が見えないでしょうし、朝に山菜などを採って食べる事もできますしね」
「うん」
私は体を背けたまま答えた。
「僕は狙われている身なので起きています。時音さんは休んでください」
「え・・・・・・寝なくて平気なの?宗次郎」
「平気ですよ。それに・・・・・・今夜は眠れそうにないです・・・・・・。人を・・・・・・殺めてしまったから・・・・・・」
宗次郎が悲しそうに言った。
「宗次郎・・・・・・」
宗次郎を抱きしめてあげたい・・・・・・。
「着替え終わりました。こちらを向いてもいいですよ」
私は宗次郎の方に向き直った。
「時音さん、未来の時代ってどんな感じですか?」
「え?うーん・・・・・・この時代より文明が発達していて、色々と便利になってるよ」
「へぇ、楽しそうだなぁ」
宗次郎が平成の時代に居てくれたら、きっと私の人生変わってた・・・・・・良い方に。
「明治時代をどう思いますか?」
宗次郎が私に訊いてきた。
「思ったより悪くないよ・・・・・・」
だって宗次郎が居てくれるから・・・・・・。
「そうですか」
宗次郎がにっこりと微笑んだ。
「じゃあ・・・・・・」
宗次郎が私の体をひょいと持ち上げて、
「山に向かいます」
と、地面を強く蹴った。
「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」