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僕の大型鰐

第3章 自覚


そして3日経った今。
クロコダイルの心は嵐の前の静けさのように凪いでいた。昼過ぎのカジノ、昼食に出ているのか客は珍しく少ない。シャルラは時刻の事は言わなかったが、そろそろ来るだろうとクロコダイルの予感が言う。
少ないながらもいる客たちが、クロコダイルの方を見てはヒソヒソと何か喋りあった。
「一体どうしたんだクロコダイルさんは…!」
「わからねぇが、機嫌は良くなさそうだ」
クロコダイルはVIPルームへ続く通路の真ん中に腕を組んで仁王立ちしていたのだ。

「たっだいまぁ!!!」
カジノのドアを堂々と開け放ち気まずい空気を粉々に叩き割った青年。言わずもがなシャルラである。
「わざわざ本人が待っててくれるたぁ、恋人冥利だね!」
「無駄口はいい、さっさと来やがれ」
「はーい」
青年を見るなり踵を返したクロコダイルに、小走りで追いかける青年。
客は何がなにやらわからず、ただ目を点にして顔を見合わせた。


シャルラに3日前と変わった所はどこにもない。荷物を持っているわけでもない。強いて言えば服装くらいだが、動きやすさのみを重視したようなそれは特別なものにも見えない。準備というのが何だったのかは今の所全く謎である。
ロビンが用意したという部屋へ歩いている間、シャルラは意外と大人しく後をついてきていた。
扉の前で立ち止まり、振り返る。
「ここがてめぇの部屋だ」
シャルラは迷わず扉を開けて中へ入った。内装は普通の客室と大して変わっていなかったが、ベッドはキングサイズに代わっていた。シャルラが満足気にこちらを振り返った。
「ありがとねー。場所は覚えたし、次はロビンちゃんに挨拶しに行かなきゃ」
「ァア!!?」
「だってどうせ隠し通せるような関係じゃないだろ?」
「…………」
クロコダイルが眉間に指を置き、落ち着こうとした隙にシャルラはいなくなっていた。

深く深呼吸して、クロコダイルは自覚した。


おれは、

シャルラが、

苦手だ。
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