第40章 ここってもしかして
『送ってくれなくても良かったのに』
「クラブの後も送っていただろう」
『もう小学生じゃないし、平気だよ』
「何かあったら嫌だからね」
赤司の脳裏に部活の引退の後に起きた事件の光景が映し出される
それ以外はなにもなかったが自分がいたから起きなかっただけかもしれないのと、あとは自己満足だと彼は自分心の内を分析していた
『過保護だなあ、まったく』
「名前になにかあるくらいなら、過保護で構わないよ」
『もー…頑固で過保護だな』
ケラケラと笑う苗字の姿が中学時代の苗字と重なる
同一人物だから当たり前なのだが、その姿が、笑顔が判断力を鈍らせて、いずれ消えてしまう彼女に聞きたかったことを問いかけてしまった
「名前はこれからも、オレの隣にいてくれるかい?」
『…どういう意味で言ってる?』
「そのままの意味だけどね」
変な質問かもしれないが、何か問題がある質問ではない
苗字が赤司の瞳をジッと見るが、彼がふざけているようには見えないので彼女もちゃんと答えることにした
『物理的にだったら難しいけど、征十郎のことは支えていくつもりだよ』
「支えていく?」
『とりあえずこの3年は一緒にいるよ。大丈夫』
「卒業後は?」
『ねえ早くない?まだ入学したばっかなんだけど』
「…それもそうだね」
また彼女は楽しそうに笑い、今日の練習がどうだったかを聞いてくる
クラブに比べてどうかとか、同級生がどうかとか他愛ない話をしながら彼は苗字を送り届け、いつものように歩いてきた道を戻り始めた