第21章 おかえり
彼らが帰ったあと、雪が念の為明日にでも検査受けろというので彼女はしょうがなくまた病院服に着替えてベッドに入る
ただし部屋に1人、彼は帰らず残っていた。なぜかは知らないがずーっと苗字の髪を指で梳かし続ける分からない男、赤司征十郎である
2人きりになったのだが彼らの間に会話はない。なんとも気まずい空気が流れていた
「…名前」
『はい』
「火神は、もういいのかい」
『…それは妬いてるってこと?』
「妬いていないと思ってるのか」
『いやあたし寝てたからわかんないって』
「火神と、どんなことしてたんだ」
『お父さんか何か?」
「…言いたくないなら構わないよ」
『うーん、中学生より清いお付き合いだったよ。おててしか握ってません』
「…本当かい」
『本当だよ!火神に聞いてみなって!』
そもそもその時の感情は分かるが記憶があるだけで、知識というのが例えるにはやはり一番近いのではないだろうか
うんうん1人で頷いている呑気な苗字と違い赤司は子供のような表情をしている
「名前」
『はい』
「抱きしめて、いいかな」
『…ドウゾ』
片言になっている気がするが気にしないようにし、腕を広げる苗字。包み込むように赤司が腕を回す
彼の頭が肩のあたりにくる。懐かしい香りがして、反射的に抱きしめる腕に力が入った
答えるように彼の腕にも力が加わる。満たされていく感覚と、何かが込み上げてきて視界がぼやけてきた