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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


「えへへ」と気まずく笑う湖を説教したいところだが、大人が4人もいて遊ぶのを見ていただけ
だれも止めなかったのだから、怒るわけにもいかない

「まったく…」

小さな宿場が近くにあり、一行は一部屋借りると湯を貰うことにした
店主が湖を見て即湯浴みの部屋に案内してくれた
湯浴みとはいえ、お風呂があるわけでは無い
成人が入れる大きな木桶に、お湯を貯めるだけだ
それでも冷えた身体には嬉しい暖かさだ

裸になると、桶に足を入れる
じんとする感覚に、ゆっくりならして桶にぺたりと座れば
腰下までの湯が身体を温めてくれた

誰もいない部屋に水音が響く
戸外には羽織を脱いだ謙信と信玄が壁に寄りかかりながら立っていた

「幸村と佐助が着物を取りに戻った。ゆっくり此処で休んでから帰るぞ」
「…不要なことを」
「そう言うな。君主に風邪を引かせるわけにはいかんだろう」

くくっと笑う信玄

「…佐助達を追いやって、何をしたい」
「あー…んー、やっぱりわかるかぁ」

宿に着き早々、信玄は幸村に着物を取りに行くように命じた
謙信の着物は、湖を抱き上げていたことで肌襦袢まで濡れていたのだ
謙信は「不要」と言うが、信玄は「近くだろう、直ぐ戻れる」と幸村を出したのだ
とはいえ、途中までは城から軒猿が運んできている
城までは行かずに済むのだ
現場を見ていた三ツ者から連絡が入りすでに着物はこちらに向かっているのだから
軒猿が来ているならと、佐助も連れだって出て行った
そして、湖は今湯浴み中だ

「湖をな、俺の娘に迎える…そう言ったら、お前…どうする?」
「……別にどうもせん」

謙信の表情は変わらない

「思った通りの返答だな」
「どうにもせんが、理由は教えろ」
「どうやら俺は、湖の秘密を知ったようでな。他者には知られてはならないものだったらしい。知ったからには責任を取れと、湖から宣言された」
「相変わらず突飛な…だが、支障はない。だろう?」

部屋から時折水音が聞こえ、今は機嫌がいいのか鼻歌まで聞こえ始めている

「まぁ、支障はない」
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