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【イケメン戦国】私と猫と

第28章 桜の咲く頃  四幕(十二歳)


「「側に居る」「望む限り、ととさまでいる」って…ととさま、言ったよね」
「…湖?」
「信玄様、私の本当のととさまになって」
「本当の親子に、なるか?」

湖の瞳に陰りはない

「……大人になっても、そう望むのなら、な」
「桜さまの治療が終わって、皆が知っている私に戻っても。信玄さまと本当の家族になることを望むよ」
「湖」

信玄の声色は固いままなのに、湖の頬がふと緩む
呑気な笑みを浮かべ、屈託ない笑みを浮かべているのだ

「かかさまは、知ってるもの。なら、本当のととさまが、秘密を知ってても問題ないでしょう?だって、ととさまは…私を守ってくれるもん」
「…俺は国を奪われた」
「兼続から教えてもらったよ」
「奪ったのは、織田信長だ。奪われたものを奪い返す為に戦をすることになる」
「どうして戦をするの?って…ととさまの答え、ちゃんと覚えてるよ」

両膝に突いた手を、信玄の首に回すと
その腰を抱えるように信玄も湖を引き寄せ、自分の胡座に納める

「記憶が戻れば…お前は、俺と安土とで板挟みだ」
「ととさまと安土でなの?兼続ではなくて?…そっか…私は、私が思っているより安土側の人間だったのかなぁ」
「それだけじゃない…お前には産みの親もいるんだ」
(俺が知らない…血の繋がりのある親)

一瞬間があき
だが、クスクスと笑う声が信玄の首元から聞こえた

「笑い毎にはならないぞ」
「わかった。なんとなくわかったけど、私には皆がいう「大人の記憶」は今ないもん。桜さまは、今を楽しく生きろって言ってくれたの。それに、「今の私」が消えるわけでもないって…なら、「今の私」望みを、取り戻した「大人の記憶を持った私」が後悔する事はないよ」
「…わからんだろ」

歯切れのわる信玄の返答に、湖は手の力を緩めて身体一つ分距離を開けると信玄の顔を見上げた

「私、すごいかも…ととさまも、かかさまも二人づついるんだね!後悔は絶対しない。記憶が無くても同じ人なんだよ、私。思ったまま行動しなかった方が、絶対後悔するもん」
「……確かに…湖らしいな」
「でしょう?」

ふふっと笑えば、信玄も笑い返す

「…わかった。だが、すぐには無理だ。色々準備することが出てくる」
(特に安土の連中だな…)
「はーい。それまでは今のままね」

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