第7章 戸惑う心
「なぜって、それは神那ちゃんが1番分かってるでしょ?」
「……」
「そうだよね、神那ちゃんならわざわざ僕の口から説明しなくても分かるよね」
勝ち誇ったように口角を上げ、私を見下ろす神崎。
誠に納得いかないが神崎の言う通りだったので無言で目を逸らす。
言い返すことも出来ない。
なんとも微妙な重たい空気だ。
「皆はヘリで戻ってね、僕らは2人で仲良くタクシーで帰るから」
何が仲良くだよ。
皆にそう告げ、タクシーが通るのを待つ。
「講演会の場所がたまたま近くてね。
ニュースで事故のこと見て駆けつけたの。
この規模じゃあ人手が足りないと思ってさ」
ヘリが離陸すると同時に聞いてもいないことを喋り出した。
それまで口を開かなかったのは私の為だろうか。
そんな気遣い必要ない。
私が至らなかっただけだ、何を言われても言い返すことは出来ない。
「そう」
「それよりどうしたの?神那ちゃん。
迷うなんてらしくないじゃない。
何かあったの?」
タクシーを待つ間、夕日を背に口を開いた。
その言葉は責めているようではなくて。
心配したような、驚いたような……そんな声色だった。
「……迷ってたんじゃない、戸惑ってた」
「どうして??」
不思議そうに眉を下げる神崎の顔は傑作だ。