第7章 戸惑う心
「懐かしいなぁ。あの頃はむっちゃ大変やったなぁ」
神那さんは厳しいし自分の目で見て学ぶしかないし。
決して多くは語ろうとせず、淡々とこなしていくその姿に必死に食らいついていく他なかった。
「え、藤代先生がですか?」
「当たり前や!
神那さんに怒られて、その度に純さんに励まされて……」
一旦手を止め話す。
挫折というものを初めて痛感させられた。
今まではなんでも器用に卒なくこなして来た自覚があったから、尚更。
この人から学びたいと、初めて思えた人。
「へぇぇ……なんか意外です。
いつもサラッと格好よくこなしてた藤代先生がそこまで言うなんて」
「水原、お前俺をなんやと思ってるんや?」
机の上を整頓し終え、証明写真と下に名前が入ったプレートをボードを貼る藤代。
そのボードには救命医師、本日のフライトドクター、及びフライトナース、CS、ヘリの操縦士、整備士の枠組みがある。
そこに写真と名前入りのプレートを貼るのだ。
この写真はIDにも用いられている。
私の写真はいつも無表情。
写真なんて顔が映っていればなんの問題もない。
神崎は頬を緩ませニンマリ笑ったもの。
藤代は口角を少し上げたもの。
フェローは歯を見せた笑顔のもの。
証明写真には特に決まったルールはなく人それぞれだ。