第16章 発覚
カウンターで賄いのパスタを食べていると、店のドアが開いた。
「お疲れ様です。」
そう言って徹が入ってきた。
「徹?どうしたの?」
「スーパーに飲み物買いに来たから、ついでに迎えに来た。」
「あ、ありがとう…。」
徹は私の隣に座った。
「徹君、何か飲むかい?」
「いや、大丈夫です。シュリ迎えに来ただけなんで。」
「そうか。優しいんだね、徹君は。」
マスターの言葉に徹は若干照れながら軽く頭を下げた。
「待っててね、急いで食べるから!」
「別にゆっくりで大丈夫だよ。」
そうは言われつつも、なるべく急いで食べた。
パスタを食べ終わった私を見てマスターが言った。
「食器はそのままでいいよ。」
「え、いいんですか?」
「うん。徹君も待ってるし、着替えてきなさい。」
「ありがとうございます。」
私はスタッフルームに入るとタイムカードを切って急いで着替えた。
「徹、お待たせ!」
「ん。じゃあ帰るか。マスターお疲れ様でした。」
「お疲れ様でした!」
「うん、お疲れ様。気を付けて帰るんだよ。」
店を出ると、夜風が気持ち良かった。
「徹、迎えに来てくれてありがとう。」
「帰り道でぶっ倒れたら大変だからな。」
「それで来てくれたの?」
その問いかけに対し、徹は何も言わなかった。
「徹さ、知り合った頃より優しくなったよね。」
「…お前にだけな。」
「え?」
「他の奴には何かしようとか思わない。お前にだから、するんだよ。」
徹は私と顔を合わせようとしなかった。
恥ずかしくなり、私も俯いた。
すると、徹がそっと私の手を握った。
「検査結果、何もないといいな。」
「うん…そうだね。」
静かな夜道をゆっくりと歩きながら、二人でアパートに帰った。