第13章 大学祭2日目
「私は店番でいいわ。」
桐生先輩が自ら店番を名乗り出た。
「桐生一人じゃ不安だな。いつスイッチが入って暴走するか分からない。俺も店番しながら桐生を見張ります。」
桐生先輩のスイッチとは、綺麗なものや人を見た時に興奮状態になり周りが見えなくなることだろう。
田中先輩の言い方が勘に触ったのか、桐生先輩が田中先輩を睨み付けた。
「じゃあ店番は彩菜と瞬に頼んで…他のメンバーは遊びに行っていいぞー。」
相田先輩がそう言うと、紫音先輩が七瀬の手を握った。
「なんですか?」
七瀬があからさまに嫌そうな顔をした。
「石川さんは俺と一緒ね。」
「はぁ?嫌ですよ。」
「ん?なに?聞こえなかった。」
絶対に聞こえているはずなのに、紫音先輩はわざと聞こえないフリをした。
「いーやーでーすー!」
「聞こえないなー。」
紫音先輩は自分より背の高い七瀬を強引に引きずって歩き出した。
遠ざかる二人を見て、相田先輩が笑った。
「紫音もなかなか積極的だなぁ!」
「七瀬、大丈夫かな?」
不安になり、徹を見つめると、全く興味がなさそうに欠伸をしていた。
「大丈夫だろ。」
「あんた全然興味ないでしょ。」
小山先輩が相田先輩の手を握った。
相田先輩の顔が一瞬にして真っ赤になる。
「な、なんだ志乃っ。」
「武先輩は私と行きましょー?」
「か、構わないが…っ。」
ガチガチに緊張する相田先輩。
二人は仲良く手を繋いで歩いて行った。
「…相田先輩が卒業する前に上手くいくといいな、あの二人。」
「もう付き合ってるも同然じゃない。」
田中先輩と桐生先輩が淡々と話した。
「相田先輩って、やっぱり小山先輩のこと好きなんですね。」
「相田先輩の一目惚れよ。」
桐生先輩が不敵な笑みを浮かべてそう言った。
「君達も行ってきなよ。」
田中先輩にそう言われ、徹を見た。
気付けば残りは私達だけだ。
「徹…行く?」
一応聞いてみた。
「…このままじゃ寝そうだし行くわ。」
すると、徹が私の手を握った。