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ラ・カンパネラ【PSYCHO-PASS】

第34章 番外編:恋病メランコリー【ep-03】


「――ん?」

目を覚ました瞬間、泉が感じたのは知らない匂いだった。

「汗臭い――。」
「悪かったな。」
「こ、狡噛さ?!――え?」

急に頭上で低い声がして、泉は目を白黒させる。
その様子に、慎也は笑った。

「なんだ。お前そんな顔も出来るんだな。そっちのが可愛いぞ、泉。」
「な、名前!」
「良いだろ、別に。誰もお前を名前で呼んでないしな。」

慎也は楽しそうに笑えば、近くのペットボトルに手を伸ばす。
一口飲んで渡してやるが、パニックになっているのか泉の顔はいつもの能面と違い百面相をしていた。

「――ここは?」
「俺の家。しばらくここにいろ、いいな。」

有無を言わせぬ慎也の言葉に、泉は口をパクパクさせる。

「――悪かった。俺がいたのに。」

ポツリと呟くように言われ、泉は慎也を見る。

「なんで狡噛さんが謝るんですか?」
「守ってやれなかった。本当に悪かった。怖かったよな?」

彼女の手からペットボトルを奪って側に置けば、慎也は泉を抱き締める。
その腕を拒もうとするが、慎也の腕はそれを許さなかった。

「――狡噛さん、離して!」
「離さない。――俺の前でぐらい我慢するな。」
「何、言って…!」
「さっき『行かないで』って言っただろ?」
「アレ、は――!」
「どこにも行かない。側にいてやるから。」

その言葉に、泉は我慢していた何かが振り切れる。
ボロボロと流れて来る涙は、止まる術を知らなかった。

「――嫌だったのに!人に縋ったら一人じゃ生きて行けなくなるから、嫌だったのに!」
「バカな事考えんな。人間は一人じゃ生きてけねぇよ。」

何年振りかに泣いた泉は、そのまま慎也の腕の中で泣き疲れて眠ってしまった。



「君を一人に出来るわけないじゃないか。僕もすぐに後を追うからね。」



「で~?俺達に任せて自分は日向チャンとラブラブしてたってワケ?狡噛サンよぉ。」
「うるさい。で?」

絡んで来る佐々山をあしらいながら、慎也は報告を促す。

「指紋出たよ。無用心だねぇ。ハイ、ド~ゾ。」

報告書を見れば、慎也は立ち上がる。

「狡噛。」
「ギノ。外出する。佐々山、行くぞ。」
「りょ~かい。」

男の住所を張り込んでいれば、丁度犯人と出くわす。
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