第28章 ・繋がる
瀬見さんは一体何をと文緒は思う。牛島の家に来てから自分の知らない所でしかし自分の事で何やら進行している事が多すぎはしないか。
「言われた時は特に気にならなかったがよく考えれば理由もなく妙な事を言う奴ではない。お前と何かあったと考えるのが妥当だろう。」
若利がバレー以外のことでキレキレである、などと呑気に考えている場合ではない。文緒は大方の事を答えた。ただし若利に対して兄以上の思いを自覚した事だけはどうしても言えない。
「そうか。」
若利は再びそう言った。
「それで事はわかった。」
その時はそれだけで済んだ。胸を痛めながらも文緒は一旦安堵した。
次の日の事だ。その日は若利に部屋へ呼ばれなかった。お疲れなんだろうとしか文緒は思っておらず、無理して義兄の所へ行くこともあるまいと自室にて宿題などを済ましそれから趣味で箪笥の上に飾っている人形とその家具につんだ埃を落としていた。置き直す時にふと思いついて模様替えなぞをしてみる。家具の位置を変えて、ついで玩具の皿に置いてあった紙粘土で自作したケーキを同じく自作した果物に交換してみる。
「こんな感じかな。」
例の携帯型映像機器で写真を撮りながら1人悦に入って文緒が呟いた時だ。部屋の扉を叩く音がする。
「はい。」
「俺だ。」
振り込め詐欺かと突っ込みたくなるが文緒には義兄の若利である事がすぐにわかった。珍しい、文緒を自分の部屋に呼ぶ事はあっても自分が文緒の部屋に来ることなど殆ど無いというのに。
「どうぞ。」
文緒の許可を得た若利は早速扉を開けて入ってきた。見慣れぬからだろうか、入ってほんの少しの間若利はぐるりと部屋の中を見回した。
「珍しいですね、兄様がこちらにいらっしゃるなんて。」
「用があるから来た。」
用もなくくるタイプではないことくらいは文緒でもわかる。とりあえず義兄を立たせたままというのはよろしくないと思い文緒は押入れから座布団を取り出して若利にすすめた。
「文緒」
ボスっと音を立てて若利は座布団に座った。ちょうど文緒と向かい合った形だ。
「昨日の話だが。」
直近で心当たりがある話題は一つだけだ。見当はついていたが文緒は念の為確認した。