第23章 ・隠れていたもの
2、3日後の話だ。
「牛島さんっ、文緒はどーかしたんですかっ。」
「お前いきなり何つー聞き方すんだよっ。」
勢いよく若利に尋ねる五色に瀬見が突っ込む。
「どうとは。」
しかし若利は特に何も感じていない。
「今日の体育、バレーボールで文緒がちゃんとレシーブしてましたっ。試合で何度も狙い撃ちされてたけど全部繋いでましたっ。」
ああ、と若利は呟く。
「教えてほしいと言うから先日の休みに少し練習に付き合った。」
瀬見がへえと言う。
「運動苦手で天然お嬢様の文緒がねえ。」
「先の授業でわざと顔に当てられたのが腹に据えかねるからと言っていた。」
ああと山形が口を挟む。
「こないだ顔に湿布貼ってたの見たけどそれか。」
「そうだ。」
「女子の喧嘩はエグいですね。」
川西が余計な一言を挟み瀬見に睨まれる。更に天童が参加した。
「でもさ、文緒ちゃんがそこで奮起するなんていっがーい。」
「そんな事ありません。」
目をグリグリさせる天童に五色が言う。
「あいつを弱っちいと思ってなめてる方が悪いんですっ。」
「工、随分文緒ちゃん買ってるねえ。」
「天童さん、あいつ怒らせたら何気にヤバイんです。」
「何かしでかしたの、工。」
「いやぁっ、別にっ、何もっ。」
「ぜってえ何かやったな。」
瀬見にまで言われて慌てる五色を他所に若利は1人呟いていた。
「そうか。」
言いながら若利は無意識に顔が綻んでいる。
「ちゃんと出来たか。」
密かに微笑むその顔は大平と白布だけが見ていた。
「嬉しそうだな、若利。」
「悪い気はしない。」
「兄貴と言うよりまるっきり親父さんですね。」
「だから賢二郎はよしなさいって。」
「よくわからんが愛はある。」
「うわあっ、賢二郎がショートしたっ。」
「ちょっと獅音、そっちで何起きてんのさ。」
「いやこれ何て説明したらいいんだ。」
大平が慌てているのも白布が珍しくショートしてしまったのも自分が原因と気づかず若利は五色に声をかけた。
「五色、」
呼ばれた五色は漫画のごとくギクウウウウッとした。
「お前が文緒を怒らせるとは一体何があった。」
「いえあの」
「詳しく聞こう。」
「マジすか。」