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My important place【D.Gray-man】

第38章 幾哀心



 あれってなんだろう。
 あの神田の笑顔のことじゃなさそうだし…。
 でもここでそれを問いかけたら、多分雪さんは教えてくれなさそうな気がした。

 …だから、


「はい」

「!!」


 にっこり笑って知ってるフリをすることにした。


「ほ、本当に…!?」

「本当です」

「えええ…! 忘れてアレン! 今すぐ!」

「えー」


 忘れるも何も、何も知らないんですけどね。
 でも顔を赤くしたり青くしたりしてあたふたする雪さんには悪いけど、その反応が面白くて。

 …少しだけ、


「じゃあ交換条件でどうですか」

「交換条件?」


 我儘を言うことにした。


「今度また、街で美味しいクレープご馳走して下さい。できれば二人で」

「二人って…リンクさんに怒られない?」

「何度も怒られてるし、今更です。一緒に出掛けてくれたら、あの時のことは忘れます」


 そうはっきり告げれば、雪さんは困った顔をしながらも微かに頷いてくれた。


「そんなことでいいなら…」


 そんなことがいいんです。
 それは口に出さずに、自然と浮かんだ笑顔だけを雪さんに向ける。

 ごめんなさい、嘘ついちゃって。
 でもこれくらい別にいいですよね神田なんていっつも雪さん独占してるんだから。
 いっつも。


「あ、でも周りにはそのこと秘密ね。特にリナリー」

「なんでリナリー?」

「まぁ色々とね。色々と」


 リナリーに秘密にする理由はわからなかったけど…雪さんがそう言うなら。


 彼女は僕のものじゃないけれど。
 僕が守りたいと思う大事な人。
 その一人。


「じゃあ今度、時間できたら誘うね」

「はい、楽しみにしてます」


 そうやって笑っていてほしいから。
 …一緒に、笑い合っていたいから。
 まだまだ14番目に関してはわからないことだらけだけど…抗ってみせる。


 僕が僕である為に。











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