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My important place【D.Gray-man】

第38章 幾哀心



 恐らく自分の内に、強い意志は秘めているだろうけど。それを周りには見せずに、一人で立っている。
 オレみたいに取り繕って。

 …そういうもんが最近はユウの存在の賜物か、剥がれ掛けてきた気はするけど。
 さっきのもそう。
 知らなかった表情を見せてくれるようになった。

 でも未だに雪が抱えているもんはわからない。
 知らなかった顔を見せてくれるようになったからって、誰にでも心の内を曝すようになった訳じゃない。

 そういう背を向けてることもあるのに、でも向き合う時は向き合ってくれる。
 …中国でオレが吐き出した本音を、ちゃんと聞いてくれた時みたいに。

 そんな簡単に説明できない雪という人間は、複雑で不器用で興味深い。
 聖者なんかじゃない、ある意味人間らしい人間だと思う。
 綺麗なだけの人間じゃないから…だからオレも惹かれたのかな。


〖今暫く様子見じゃな〗


 ぼそりと呟くジジイの言葉に、意識が引き戻される。
 やべ、つい雪のこと考え込んでた。


〖なぁジジイ〗

〖なんじゃ〗

〖…アレンが本当に14番目とかいうノアに成り変わっちまったらさ…オレらはどうするんさ?〗


 アレンの体に宿っている"14番目"のノアメモリー。
 それがもし覚醒したら、アレンは本当にこの黒の教団が敵と見なしてる存在になってしまう。
 そうなった場合、教団側でもない立場のオレ達はどうするべきなのか。
 …アレンを単なる情報として見るのが難しくなってしまった、それはオレの無意識の縋り付きだったのかもしれない。

 中立の立場として、アレンのことを見ることができるオレらなら──


〖どうもこうもない。我らはその歴史を記録するだけだ〗


 淡々と発せられるジジイの言葉は"現実"を告げていた。


〖我らは今こうして教団側にいるが、完全なる彼らの仲間ではない。それを忘れるな〗

「…うっせーな」


 わかってんさ、それくらい。


 ザシュッ


「いってェ…!」

「素直に"はい"くらい言えんのか貴様は!」


 そして二度目の鋭い鉄拳が頭に振り落ちた。











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