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My important place【D.Gray-man】

第38章 幾哀心



「…まじかぁ」


 食堂の机に肘をついたその手の上に、ぐでっと頬を乗せる。
 上半身を倒してダルけきった体制のまま、つい溜息が漏れた。
 目線の先は、少し離れた席で一緒に飯食ってる男女。
 ユウと雪。


「ぅぉぁあ…ッ」

「…………とうとう頭でもイカれたか」

「違ッつーんてきた、つーんって…!」

「…山葵の入れ過ぎだ馬鹿。食材本来の味が死ぬだろ阿呆」

「ちょ…さらっと二回も悪態入れないでくれるかな!ちょっと山葵の量間違えただけでしょ、蕎麦奉行ですかッ」

「お前が美味い食い方知りたいっつーから教えてやっただけだろ。馬鹿な食い方すんな、勿体無い」


 それはいつもと変わらない光景だった。
 どうやらユウの好きな蕎麦の食い方カルチャーでも受けてるみたいだけど。
 最近、二人でああして並んで飯食ってるとこはよく見てるし。

 …雪のユウへの想いは知ってたし、ユウも雪のことは他人以上に気に掛けてたみたいだから、それは自然な光景だと思ってたけど…。





『だって折角任務終わりで恋人に会えたんだし。邪魔しないであげたいじゃない』





 まさかもうデキてたなんて。
 言った後に"しまった"って顔したリナリーの反応を見る限り、あれは本当のことなんだろう。

 遅かれ早かれくっつくのは時間の問題かなぁとは思ってたけど…。


「…はぁ」


 改めてそれを受け入れると、やっぱ若干凹む。
 …というか、


「ユウって、もっと包容力ある大人な女性が合うと思ってたのになー…」


 あんなにド短気で暴力的で超が付く程、癖のある奴だから。
 ユウでも手を上げるのを躊躇するくらい、可憐さとか滲み出てる女性とか。
 癖あるユウでも手玉にとってしまうくらい、大人な余裕ある女性とか。
 絶対そういうタイプが合うと思ってたのに。

 女を売りにしてない、んでもって日頃からユウによく叩かれてる雪がそういう対象になるなんて。
 …ほんと、恋愛ってどう転ぶかわかんねー。

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