My important place【D.Gray-man】
第38章 幾哀心
──ねぇ、この花
──知ってる?
最初に見えるのは、視界一面を覆い尽くす蓮華の葉と茎。
所々、薄い花が咲いている。
──見てみたいなぁ
──一面に咲きほこっているところ
次に目に映るのは、その蓮華に囲まれて立つ後ろ姿。
色素の薄い髪を一つに結んで、ふわりと柔らかい曲線を描く女物の服を靡かせる。
──いつか、ふたりで
──一緒に見ることができたら
優しい口調で、思いを馳せるように紡がれる言葉。
──花弁が落ちる前に…
その声が少しだけ、寂しそうな音色に変わるから。
だから"約束"したんだと思う。
──ホントに?
俺の声に反応して、振り返る顔。
眩い陽の光を受けて、反射で少しだけ見え難かったけれど。
──おじいさんとおばあさんに
──なっちゃってもよ?
彼女は嬉しそうに笑っていた。
柔らかい表情で、はにかんでいた。
──…待ってるね、ずっと…
必ず守ると決めた。
彼女の為に、俺自身の為に。
──…待ってる
思いを込めて何度もそう口にする。
そんな──…愛する人の為に。