My important place【D.Gray-man】
第25章 ノア メモリー
「なんでわかるの」
「濡れてる以外は、服飾の廃れ具合とか肌とか髪の汚れ具合とか全部一緒なんさ」
流石次期ブックマン後継者。
あの時ちらっとしか見なかった人形のことを、鮮明に記憶していたらしい。
こういう時のラビの頭の冴えは、ずば抜けていると思う。
「じゃあなんで同じ人形が此処に?」
なんで置かれているのか。
「濡らした誰かが、運んだんじゃないんスか?」
「…なんの為に」
「さぁ…」
しげしげと人形を見ていたチャオジーが、不意にそれに手を伸ばす。
恐怖心なんてないんだろう、ひょいと軽くそれを持ち上げて、再び人形は高い声で笑った。
『キャハハハハ』
「うわ、ぐっしょり。濡れてるのに中の機能は壊れてないみたいっス」
『あたしエリー』
ふにふにと腹部を押せば、またあの時と同じ台詞を人形が吐く。
わかったから、それ押すのやめようか。
『なかよくしてね』
『キャハハハハ』
『あたしエリー』
わかったわかった、わかりましたから。
なんか怖いから!
「チャオジー、あんまりそれで遊ばないで。なんか怖いから」
「そーさ。そんなもん早くそこに置けってッ」
「え…と、はい」
青い顔で言う私達に圧されて、チャオジーが大人しく人形を元の水滴の上に戻す。
『あたしエリー』
『なかよくしてね』
それでも人形から出る"声"は止まらない。