My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
素知らぬ顔で笑っているシェリルとロードから目線を外すと、唯一素でいるティキにワイズリーは語り掛けた。
「安心せい、雪は大丈夫だ。ワタシがケアをしておいた」
「なんだよ、ケアって」
「ケアはケアだ。詳細は言わんがの」
「は?」
「あれはワタシと雪だけのやり取りだ。雪の為にも秘密にしておかねばのう〜」
「覗き魔の癖に何言ってんのお前…?」
「落ち着きなよぉティッキー。雪が無事ならいいじゃんか」
「本当、君達はラースラに執着するよね。僕にはよくわからないよ」
宥めるように、ぴょこんっとロードの体がティキの膝に乗る。
それを羨ましそうに見つめながらも、やれやれとシェリルは目の前のティーカップに手を伸ばした。
此処はキャメロット邸の数あるうちのオープンテラスの一つ。
と言っても豪邸であるそこは、軽くスポーツが出来そうな程の広さを持つ。
「それで、ちゃあんと雪の心は捕まえてきたの?」
「捕まえるも何も、元から雪の心は神田ユウだけのものにはなっていなかったようだぞ。喜べ」
「へえ? じゃああのセカンドエクソシストを殺してもラースラに影響はないってことかい?」
「影響はあるだろう。じゃが雪の破滅の道を阻むことはできるやもしれん。主次第でのう、ティキ」
ロードとシェリルの問いに応えながらも最後にワイズリーが名指したのは、紅茶にも茶菓子にも一切手を付けていないティキ。
どういう意味かと目で問う彼に、にっこりとワイズリーは笑い掛けた。
「主は会うのを拒んだが、雪は違ったようだぞ。主に会いたいと、捜しておった」
「……」
「へえ〜妬けるねぇティッキー」
「僕のティッキーに? フン。色仕掛けなんて掛からないよ、彼は」
「いつからティキは御主のものになったんじゃ…」
外野のやり取りには反応を示さず、一人じっと目の前のティーカップをティキは見下ろした。
しかしその目が見ているものは、温かい飲み物などではない。
「どうするの? ティッキ〜」
甘ったるい声で問い掛けるロードに、ようやくティキの目が向く。
その顔に感情らしいものは見えないが、やがて彼は答えを口にした。
「俺は──…」