My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
"そんなに気に入ったの、それ"
"っ"
"そっか。大事にしてくれて、俺も嬉しいよ"
大きく頷く雪に、男の声に優しさが含む。
その言葉からして、男が雪にあげたものなのか。
おいで、と呼び掛けられ、雪の小さな足が男の下へと向かう。
"腹減っただろ。飯にしよう"
その声には、あの両親と同じに雪へと向ける愛情が表れていた。
雪の後を追うように視線を向けると、片手を差し出し呼ぶコート姿の男が映る。
その顔は──────
「ワイズリー?」
「むっ!?」
「わ、何っ」
間近で呼ぶ声に、肩に触れる手。
はっと意識を戻せば、目の前で覗き込むように顔を寄せる雪がいた。
「吃驚した…っ何? 急に黙り込んで。寝落ちたのかと思った」
「少しのう、寝不足で…悪かった」
「それはいいんだけど…大丈夫? 眠いなら無理しなくても」
「いや、雪と話がしたくて此処へ来たのだ。主が気に病むことはない」
「そう?」
心配そうな面持ちの雪に笑顔を返す。
いかんの、つい入り込んでしまっていた。
…しかし、最後に見たあの男の顔は…一瞬であったが、何処かで──…
「ね、ワイズリー」
「なんだ?」
いかん、また入り込むところじゃった。
今は目の前の雪の心を捕える為に、来ているというのに。
目的を見失ってどうする。
「…え、と…あのさ…」
「?」
緑茶を淹れた湯呑みを置いてやるも、手を付けることもなく雪の目はそわそわと辺りを彷徨った。
なんだのう?
「どうした?」
「今日は…ワイズリー一人、なの?」
「一人、とは?」
「……ティキ、は?」
言い難そうにしながらも、雪の口から発せられた名に驚く。
「ワイズリーがいる時は、ティキがいることも多かったから…今日はいないのかなって…」
「ふぅむ」
「…何その笑顔。なんだか嫌な笑顔なんだけど」
「なに、気にするな」
「気になるから」
まさか、雪の心がここまでティキに傾いていたとは。
これはロードの言う心の捕獲は、必要ないやもしれんのう。