My important place【D.Gray-man】
第49章 つむぎ星に願いを
そんな腐敗臭さえする埃の舞う土地の中で、埋もれるように蹲る小さなシルエットを見つけた。
ズタ袋を被ったような服装の、ボサボサに荒れた髪に煤汚れた肌の幼き少女。
よく見れば辛うじて少女だとわかる程に、その小さな体は子供らしかぬ荒れ方をしていた。
それでも備に観察すればわかった。
先程の姿から変わり果ててはいるが、見覚えのある幼き顔。
あれは──雪、だ。
ノアとして覚醒する前は浮浪児のような生活をしていたワタシだから、わかる。
小枝のように細い手足を折り曲げ蹲り、彼女が一心に瓦礫の中で何をしているのか。
食べられるものがないか、己の餌を探している。
傍にはあの父と母の姿はない。
独りで廃れた土地に埋もれる少女の命は、なんともすぐに消えてしまいそうな灯に思えた。
ザリ…
砂利を踏む足音。
一心に瓦礫の中を漁っていた雪の姿が止まる。
顔を上げ、暗い瞳でワタシを見る。
いや、ワタシの背後にいる誰かだ。
"またそんなもん漁ってんの"
男の声だった。
自分に掛けられている声とわかっているのだろう、こくりと頷く幼き雪に、やめておけと男が止める。
"そんな残飯、食えたもんじゃないだろ。食い物なら俺が持ってきたから"
"……"
"あれ? 違った?"
今度は首を横に振ると、辿々しい足取りで雪が瓦礫の山から下りてくる。
汚れた手で握っていた何かを差し出すように見せてきた。
それは、汚れてはいるが辛うじて鮮やかな色を残した布生地だった。
"なんでそんなもの…"
"……"
" …成程ね"
雪と男の間に会話はない。
しかし動作で伝える雪の手が、大事そうに持っていた物を見せれば男には伝わったようだ。
それは一体の小さな女型の人形だった。
バービー人形のようなものだろう、少女が玩具として好むものだ。
大事そうに抱いてはいるが、所々汚れているのは雪と共にそんな生活を送っていたからなのか。
布生地を人形に当てて見せるところ、それは人形を着飾る為のものなのだろう。
凡そ人らしい生活をしているとは思えないが、その思考は同じ年頃の少女と何も変わらないように見えた。