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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



「…!」



それは神田も同じだった。
以前に任務先のマチュピチュで雪のノアの力を垣間見た時も、高圧電流のようなエネルギー体でAKUMAに痛手を負わせていた。

もしあの不可解な落雷が、雪の作り出したものだとしたら。



「…おい」

「「?」」



強い光を放った大聖堂を見据えたまま、神田の声がぼそりと双子を呼ぶ。



「一瞬でいい、あいつの気を俺から逸らせるか」

「おや。我らが大将がやる気になったらしい」

「いいね。そうこなくちゃ」



目配せをしたのは一度だけ。
くるりとティキに顔を向けると、予習していたかのように双子は同時に杖を上げた。



「"あれ"やるか」

「"あれ"だな」


「…妙な技使うみたいだけど、効果ねぇよ。俺の体は万物を自由に選択できる」



そんな双子を前にしても、ティキは逃げることも構えることもしなかった。
先程ティキを襲った金縛りのようなものも爆発も、不意を突かれて喰らってしまったが、そうでなければ体を貫通させて全て避けられた。
妙な技だがイノセンスでなければ臆することはない。



「「"アクシオ"!」」



振り下ろされる杖先。
逃げることはしなかったが、それでも何が起こるかとティキも逸らすことなく目を向けた。



「………」

「………」

「………何この時間」



しかし一向に何も起こらない。
白けた表情を浮かべ思わず突っ込む。



パッパァー!



「!?」



劈くようなラッパ音がティキの鼓膜に響いたのは、その直後だった。
ドパンッと何かが弾ける音がして、次々に目の前に黒い煙幕が巻き上がる。



「呪文はダミーさ」

「本当の狙いはそっち。おとり爆弾!」



ティキの足元に群がっていたのは、小さなラッパだった。
金色のラッパに黒い小さな胴体と足がくっ付いて、一人出に歩き回っては爆音と煙幕を撒き散らしている。
強い刺激臭の放つ煙幕には、ティキも口元を覆って後退った。



「まだまだ!僕らの記念すべき卒業用に用意しておいたんだ」

「ショーはこれからさ、つき合ってくれよ」

「邪魔臭ぇな…ティーズ!あいつら食っちまえ」



ティキの命で、一斉に夜空を舞う蝶々型ゴーレムが双子に牙を向く。
しかし蝶の群が双子の体を食らうより早く、夜空から舞い下りた影があった。

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