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My important place【D.Gray-man】

第48章 フェイク・ラバー



立ち込める黒い煙が、リッチモンド邸の外壁から外へと漏れ出していく。
神田の六幻によって破壊された分厚い壁が、いとも簡単に崩れ落ちた。



「イッテ…今のは効いたわ…」



芝生に足跡を残し着地するティキは、額から滴る血を拭い取った。
身に付けていたスーツは焼き切れ、まとめていたオールバックの髪がぱさりと乱れ落ちる。



「つーか、通路ごと爆破させるとか。雪がいたらどうすんの」

「気配がない。あいつを何処へやった」



鉄線が剥き出した巨大な爆破の穴。
その奥から姿を見せる神田の返答に、ティキの口角も上がる。
ドアの向こうには、誰もいないことを既に察していたらしい。
どうやら無闇に攻撃していた訳ではないようだ。



「怒りで後先見えなくなるタイプかと思ってたけど、そうでもねぇんだな」

「質問に答えろ」

「教えると思う?セカンドくんの傍にいたって雪は不幸なだけなのに」

「テメェに何が」

「わかるかって?それもう聞き飽きた」



血の滲む腕を、不意に神田へと掲げる。
神田がその気配を察して外部へと飛び出す前に、衝撃波のような圧がティキの掌から一気に放出された。



「じゃ俺も聞くけど、セカンドくんは雪の何を知ってるわけ」

「ぐ…ッ」



辛うじて交差させた二本の六幻で衝撃を受け止めたものの、地面を擦り後退する神田の口から、ごぽりと血が溢れた。
欠けた心臓の一部はまだ再生し切れていない。



「例えばそうだな…好きな色は臙脂色」

「っ…?」

「なんでも食うけど、特に好きなのは出汁の利いた味噌汁。懐かしい味がするんだと」

「何、言ってやがる…ッ」

「暗い部屋から見る星空が苦手なこと。雨上がりの空気の匂いが好きなこと。セカンドくんは知ってる?」



一歩一歩ティキが歩み寄る度に、重力のように衝撃波の威圧が増す。



「父親のイノセンスに拒絶されて、それでも憎めなくて。葛藤でしんどい思いをしながらも、愛を向けてたこと。セカンドくんは知ってる?」



風圧が邪魔をするはずなのに、ティキのその言葉は神田の耳に届いた。



「簡単に触れられるくらい、傍にいる癖に」



目の前で足を止めると、幾分身長の勝るティキの目が冷たく見下す。






「何も知らねぇのはどっちだよ」

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