My important place【D.Gray-man】
第48章 フェイク・ラバー
「いつまでも餓鬼にやられるような私ではないぞ」
「目が怖いッ」
ギロリと視線で圧するクロウリーに、すっかりペースを呑まれてしまったジャスデロは縮まるばかり。
デビットもまたリーチのある六幻を武器とする神田との接近戦に、苦戦を強いられていた。
「う、待っ卑怯だぞテメ…!」
「敵に卑怯もクソもあるかよ。これ以上斬り刻まれたくなけりゃあいつの居所を吐け」
繰り出される無数の六幻の突きに、デビットの体の至る所に赤い跡が増えていく。
痛みに堪えながら、それでもデビットは声を荒げた。
「はぁ!?誰だよアイツって!」
「此処に来た教団の女だ」
「知るかよッそんな奴いたらとっくに殺してる!」
「嘘をつくとテメェを先に殺」
「お待ちなさい!」
殺気立つ神田を止めたのは、舞台の袖から呼ぶテワクだった。
「月城を見たと、この人間が発言しましたわ!」
「!」
神田の視線が舞台へと向く。
その隙を見逃さず、デビットは即座に距離を取り神田から退いた。
神田が視線を向けた先。
其処にはテワクの示す人間がいた。
テワクに保護されふらつく体を支えながらも、自力で立っている若い女性。
「わ…私、たちを…助けに来てくれた…男装の、女のひと…」
「月城ですわね。彼女は今何処に?」
「連れて…いかれた…」
心許ない動作で女性が指差したのは、舞台の奥底。
薄暗い照明のため部屋の隅となると意識しなければ気付かなかったが、其処には一つの扉が存在していた。
「向こうに…連れて、いかれたの…」
「あの扉の奥へ?AKUMAにですの?」
「わ、わからない…」
(…奥か)
神田の鋭い視線が隅の扉を捉える。
この場にいるノアを退治することと、雪を助けに行くこと、どちらを優先すべきか。
その選択は一瞬動きを躊躇させたが、すぐさま扉へと踏み出した。
ガチャ
しかし神田の手が届く前に、内側から扉が開放される。
クロウリーやジャスデビも含め皆の視線が向く中、暗い闇のような通路の奥から一人の人物が姿を現した。
闇と同じ色をした燕尾服に、長いシルクハットとマスカレードマスク。
対照的な白い手袋をした手でハットの唾を握り、男は上品に挨拶をした。
「こんばんは。エクソシスト諸君」